B4 「見えない都市」をつくる

 2015 年度 設計演習 B 第四課題

「見えない都市」をつくる

小説「見えない都市」は、イタロ・カルヴィーノによる「東方見聞録」。マルコ・ポーロがフビライ汗に語って聞かせる 55 の都市の物語。読み進めると、見た事もない都市が、鮮やかに目の前に立がっていく。言語による都市のあり様や、存在の仕方の創造の例。まずは言語により、あなただけの見えない都市を立ち上げた後、その言語に忠実な形で、その「都市」をドローイングで表現して下さい。A.言葉を拾う。まず、自らの都市を作り上げるにあたり、 15 の言葉を収集する。本の中から選んでも良いし、日常生活や会話の中から選んでも構わない。B.言葉を選ぶ。 15 の言葉の中からより重要な 5 つ以下の言葉を選ぶ。C.言葉を組み立てる。 5 つ以下の言葉で都市のタイトルを組み立てる。 15 の言葉で都市を語る。D.言葉に忠実な都市をドローイングで再現する。cf「見えない都市」より-「記号が言語を形づくる。しかし汝が識ると信じている言語ではない。」- 人はそれぞれ心のなかに差異のみによってなる都市、形も姿もない都市をもっており、これを個々別々の都市が満たすという仮説が確認されるのだ。- 他所なる場所は陰画にして写し出す鏡でございます。旅人は自己のものとなし得なかった、また今後もなし得ることのない多くのものを発見することによって、おのれの所有するわずかなものを知るのでございます。- この不明瞭な報告者のもたらす事実、あるいはニュースの一つ一つをフビライにとって貴重なものとしていたのは、その周囲に残された空間、言葉によって満たされていない空虚なのだった。- 今ではマルコが都市を語るごとに、偉大なる汗の心はかえって気ままに旅立ってゆき、その都市をばらばらに分解しては、まったく違ったふうに組み立てなおすのだったー材料を取り替え、置き換え、並べ替えしながら。


提出物:テキストドローイング+ドローイング各々 275x275 の用紙の中にレイアウトする。テキストもドローイングとして表現する。
枚数:表紙+ 2 枚以上出題: 5 月 13 日
提出: 5 月 20 日テキスト課題とドローイング課題)講評: 5 月 27 日出題、
文責 村上佐恵













1X14A156 山本 圭太 A+++


平易な、日常会話で使用するような言葉を選び、ちょっとだけずらしてみる。都市においては、日常都市のエレメントを少しだけ操作してみる。見えない都市は日常の横にあるのかもしれないという、ある意味不穏な視点を、適格な言葉として丁寧なドローイングで仕上げた力作である。言葉を自分のものにしている。(村上)













1X14A129 古垣 ゆかり A+++

anonymous」から「新陳代謝する器官」へ脳髄で治まり、胎児でよんでいるつながりを様々な文字が血管や神経のシステムのように結節させて表現する世紀末のワイルドの作品に添えられた挿画の線描にように、また水彩画の引き延ばされたタッチのような描出がこの結節を浮彫りにする「見えない都市」は私たちの身体に内蔵された微細で繊細なシステムと言っているような力作。(入江)








1X14A076 菅野 颯馬 A++

異常な高さの高層ビルと描かれた創作ノート。あえて文章を作品の中のさらに作品として閉じこめることで、架空の都市が劇中劇の舞台として息づいている様子が巧みに表現されている。(山本)












1X14A081 鈴木 優也 A++


「夢見る少年」のタイトル通り少年のファンタジー溢れる作品。DREAMJOYGROWFREEDOMなどの希望溢れる言葉で構成された少年の脳内。それを覗き見るような感覚+少年の部屋を覗き見るような感覚。比較的暗い作品が多い中、一服の清涼感のようなさわやかさのある作品。(村上)

















1X14A023 太田 歩 A++


白い紙に白い点字が打たれ、これをメタリックな外皮によって挟み込まれた作品。「見えない都市」あるいは「見ることのできない都市」を描き出し、最も素直に課題に答えている作品の一つであると感じた。文字と言葉の間にある解離に挑んだ作品であるが、それでも直、視覚芸術としての絵画としても美しさが保たれている点に好感を抱いた。(早田)













1X14A063 小林 雄樹 A++


幾何学的図形が点描から実戦で、そして白と黒の図と地の反転で、表裏の表現へ、最後に塗りつぶされた黒の面に図形がレリーフのように刻印される。図形は都市の街路割や、街区を表象しているのだろう。それを線や面やそれらの重層によって二次から多様な次元へと変換させているのだろう。浮き彫られた黒に画像が全体を引き締めている。(入江)










1X14A021 江頭 樹 A++

均一な大きさの人の型、その疎密によって都市的様相を作っている作品。選ばれた言葉は、動きを表す言語であり、その行為に内包された感覚を色彩に昇華させることで、均一な者に表情をつけている。また、一方で孤独、均質化といった作者自身における現代社会の抱えているであろう諸問題を暗示させている点が、作品たらしめている。(三角)












1X14A057 小谷 春花 A++


肌色に塗られた人形やロボット、文字たちが表現する不条理なオブセッション。アングラ演劇、立て看板のようなラクスチュアは見る側の記憶と感情を刺激するが、それを共感に変えるための工夫が感じられないのが惜しい。それこそがこのような作品の意義を左右するのだが…。(山本)













1X14A051 黒川 源 A++

Karisome-都市とはtemporaryなものでしかないという日本的なアプローチ、言葉の選択、ヒエラルキーも鑑賞者にゆだねられ、その開くタイミングによって、ドローイングの意味合いも変化する。生き物としての言葉、都市の在り様を切り取る手法としては面白い。(村上)













1X14A121 平井 周介 A++


他人の気もつゆ知らず…とはじまる短歌が彫りこまれた版画作品。青と黒の2色で刷られたものと黒の色で刷られたものの2つが並べられ、どちらもふてぶてしいまでに寝転んだ人の下半身が描かれている。和歌と版画という形式を選択することで、「都市」を完全に相対化してしまうと同時に、自己批判ともとれるアンニュイな文章の選択によって、独特の世界観を完結させている。  (早田)













1X13A802 矢尾 彩夏 A++


膨張スル秩序というタイトルが付され、同心円状に広がる東京をその中心に魚眼上の都市の影を描き出している。あえて60年代風のレタリングを施しその中心性を欠如という形で浮かび上がらせることで、私たちの目に見えている都市の裏側を描き出すことに成功している。しかし選ばれた言葉は、使い古された既成言葉という印象が払えず、中心が切り取られたしかけももう少し工夫ができたはず。(早田)












1X14A0136 真木 友哉 A++

『咀嚼』。現象から排泄へと上から下へと振り下ろされた文字の配列の柱を嚥み下す人間の大きく開かれた口蓋。「見えない都市」は実在によって生起され、そこに住まう人々の生み出す言葉の散布とともに手で掴めないものとして、世界の隅々に浸透しているといっているようだ。(入江)


1X14A116 範田 明治 A++


ナチス党大会的なマススケールを表現した作品だろうか。極端に横長な画面を用いて描きあげられたスペクタクルにはかなりの臨場感がある。言葉の選択に気品が感じられないのが残念。(山本)





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