2015年度_設計演習B第五課題
「空間の詩学」
ヘーゲル以降、「現象学」という思考の方法が研究され続けて来た。それは、存在と虚構を、物質と創造を架け渡すための新たな哲学として多くの探求者を得た。「現象学」を指向した一人であるガストン・バシュラール(1884-1962)は著書『空間の詩学』のなかで想像力についての探求を試みる。そして、原初的な想像力を喚起するものは“巣”であると言う。
“巣は完璧であり、きわめて確実な本能のしるしをおびていてほしい、とひとはねがう。ひとはこの本能に驚嘆し、そして巣はひろく動物の生の不思議とみなされている。”
“世界は巣である。すなわち無限の力がこの巣のなかの諸存在を保護している。”
あなたにとって最も創造的な“巣”あるいは“棲家”を造りなさい。
蟻の巣や鳥の巣といった一般的なイメージの巣ではなく、なるべく具体的な誰か(何か)のための“巣”であること。そこに棲まう誰か(何か)について具に「想像」し、限られたスペースの中でその「空間」を最大限に表現すること。
“あまりにも明らかなイメージは一般的な観念となる。するとこれは想像力をさまたげる。みて、理解して、かたった。これでおしまいだ。そうすると、一般的なイメージをよみがえらせるには、ある特殊なイメージを発見しなければならない。”
“物質は形式から超然としていられる原理であって、いかに変形され、いかに分割されてもそれとして存在するのが物質である。”
cf.『空間の詩学』Gaston
Bachelard著、岩村行雄訳
提出物:立体物(150×150の台座を設けること)縮 尺:自由(ex.1/10000、1/100、1/1、100/1、10000/1)。但し、縮尺を明記すること。方 位:オリエンテーション(東西南北)を明記すること。材 料:自由。但し、その“巣”を実際に構成する材料で造ること。(スチレンボード等は不可。ステンレスの代わりにアルミ、ガラスの代わりにアクリル等は可とする。)出題:5月20日提出:5月27日講評:6月 3日出題:早田 大高 | ||||
1X14A120 百武 天 A++
切り抜かれ、小口が染色された半透明板の積層。断面に見え隠れする内部空間と赤く色づいた輪郭の躍動がダイナミック、見る側の想像力を刺激する。もう一段の精度があれば…と想像せずにはいられない。(山本)
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「海の巣」と題された作品。天にのびていくそれは仮家の塔、あるいは空洞であり、おそらく天も地もない重力から解放された空間なのであろう。弱々しく、揺れ動くその様は、遠目に見れば幻想的な都市の様態を表している。しかしながら、作品として目の前に対峠した時、その幻視は消え去りかねない寂しさに襲われる。はたしてプラマークの既製品の積み重ねということにどこまで自覚的に表現されたかということは看過できない。(早田)
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l X14A095 豊田 遥 A++
l X14A095 豊田 遥 A++
本棚に本がおかれている。すべて手作りである。雑誌を刻み、資源にして接着剤をバインダーとしてconcreteした材で本棚をつくり、作者が制作した本のミニアチュールがおさめられている。この手作りという制作行為が”本たちが住む”、”帰る場所”に本棚を変えている作品。(入江)
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1X14A038 軽部 蘭 A++
階段のつみかさなりによる造形。東京に乱立する超高層マンションへのアンチテーゼのようにも見てとれる。高所にすまうという" 夢二階段そのものに巣くう人間達のあり様は迫力のある画となりそう。作者の言う、精神的な宗教的な巣とするには、もう一歩踏み込んだ姿勢が必要なのでは。(村上)
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lX14A145 宮原 萌 A++
lX14A145 宮原 萌 A++
楽しい家は強い巣である。子供たちの身体や動きから発想したであろう巣。内部から形を成していく発想は健全な巣の在り様を見せてくれる。成長とともに変化する変化が、糸の張り方だけでは弱いのでは。むしろスケールが1/20 ~ 1/30 であれば成長する過程が想像できる身体的な作品となっていたのでは。(村上)
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lX14A094 戸田 弘志 A++
緑青の巣。銅づくしの線や面においてできた架構に、緑青をふいた球体が宙吊りにされている巣ということだ。どのようにして巣に近づくかは不明であるが、球体を鋼板の断片で巻き上げてつくっている手作りが球体の中に巣を想起させる温もりを生み出している。(入江)
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1X14A076 菅野 楓馬 A++
1X14A076 菅野 楓馬 A++
ル・コルビュジ、エのストラスプール会議+ダリ美術館のような。屋上庭園上の要素としての卵殻が内部空聞に対しヴォリュームとして影響しているだけでなく保光の装置として機能している。(山本)
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1X14A014 市原 将吾 A++
1X14A014 市原 将吾 A++
「風の風景」と題された作品。不器用な風鈴の様に見えてしまうか実|僚には、アルミというマテリアルが織りなす空間をっくりだそうとした作品であると解釈した。そうであれば、棲まうのは、風ではなく、音あるいは空気であり、全体のプロポーションやキャストの精度も違う選択肢があったのではないかと思う。(早田)
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1X14A079 鈴木 奈実 A++
1X14A079 鈴木 奈実 A++
通常の動物の巣のイメージと反転させた作品。生のための巣ではなく死のための巣。自然素材で柔らかく形成されるはずの外皮は金属で幾何学に編まれる。しかし、生⇔死の対比をそのまま有機⇔無機とおとし込む手法は、安直感が否めない。柔らかな死が集住(積)するべき場所とはほころんだ金属片に回答があるのか。(村上)
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1X14A122 平田 将大 A++
1X14A122 平田 将大 A++
「色の住処」と題された作品。形を持つものは何も個体だけではなく、水と絵の具という液体どうしを掛け合わせた時に、ある時間という制約の中で浮かび上がる形が存在する。色の掛け合わせを表現するのであれば、もっと別の方法があったであろう。移ろい行く時間を、色を使って表現する事に特化すれば、より緻密な作品になったはず。(早田)
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1X14A022 大木 玲奈 A++
二重に構成された階段。その隙間を利用した猫の住処。機能を持つが故に、空間としての豊かさを与える対象とはなりにくい要素に、遊具的な楽しさを与えることに成功している。(山本)
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