C2 「日本の歴史をよみなおす」





2015 設計演習C 第二課題

「日本の歴史をよみなおす」


中世日本を中心とした網野善彦の歴史観は、「網野史観」とも云われ、賛否に晒されることも少なくないが、網野が一貫して取り組んだ「未だ語られていない歴史」に対する探求と思索の姿勢から学ぶべきことは多分にあると考える。下手をすると私たちは、「語られた歴史」を「事実」として受け止めてしまいがちである。情報検索が容易になり、「必要な情報を必要な時に取り出して利用する」ことに慣れてしまっている現代の私たちは、尚更に「歴史」を「情報」として「処理」してしまう。本課題では、自らの手で「歴史」をよみなおしてみて欲しい。あなたの住む街の名前、通りの名前、交差点の名前、川の名前、山の名前、森の名前、あらゆる場所の名前の中に、未だ語られていない歴史のヒントは隠されているはずである。それらを拾い出し、具に観察し、創造的に跳躍することで、其処にあったはずの風景を描出することにチャレンジして欲しい。風景画や透視図であることは問わない。思いつく風景を自由に記述して欲しい。cf.『日本の歴史をよみなおす』網野善彦提出物:ドローイング275×275mm枚数:表紙+2枚以上材料:表現する方法に準拠した材料を選択すること。出題:10月14日提出:10月21日講評:10月28日
文責:早田





















1X14A121 平井 周介 A++

山田富士」裏富士か、富士塚かをコミカルに描いた作品。「不二三十六景」と題され、本物の「富士」を描いたものではないことが暗示され、そこに作者自身が驚愕の表情をもって映り込む版画、水彩、インキングと表現の階層を分けることで、そこに重層的な時間が表現されている点が秀逸。(早田)










1X14A094  戸田 弘志 A++

モネの「睡蓮」を思わせる、抽象を具象の境界を狙った作品。浮世絵に影響を受けたモネの技法を用いて、本家である日本の水面の深い碧を再現しようとしたのであろうか。(山本)


















1X14A156 山本 圭太 A++

「冬窓床」北海道釧路町のアイヌ語の字名。難解の地名の一つを選んで読み直したと見える。窓が構図を占め、部厚いカーテンが引き分けられてい。手前に書籍の積まれた机と椅子、傍らに窓外を臨む女性の後姿が描写されている。窓外は組まれた手指を通してもうひとつの窓が見える。最後には外から見た机で書籍を読む先程の女性が見える。各の由来は「海の中に立っている岩」というらしいが、作者の時から現代的に解釈した画像の字義からの隔たりをもっと明確にすべきだったように思う(入江)

























1X14A022 大木 玲奈 A++

目黒川には桜が咲きほこり、さんまがたなびく。「目黒川のさんま」の落語の風刺が季節の矛盾や(本来あるはずのない)魚つりをする人々の姿を通し、軽妙に表現されている。くりぬかれ、空虚となったさんまの目も良い。(村上)



 
















1X14A046  北原 遼大 A++


江戸の「にほんばし」と大阪の「にっぽんばし」を時空を超え合体させた作品。強引な接続で生じた新たな空間はとても魅力的だが、それを強調するためにもここは色を使って欲しかった。(山本)






















1X14A081  鈴木 優也 A++

「裏」というタイトルから、おとぎ話や昔話の裏を描いた様にも見えるが真意は不明。版画作品としての力強さをそこにあるかもしれない物語を連想させる力がある作品。しかし裏という抽象的なtitleではなく具体的な名詞から連想させて欲しかった。(早田)























1X14A063 小林 雄樹 A++


透明なフィルムに絵の具を重ね、表からと裏から、共に鑑賞できるような作品に仕立てている。種類を異にするフィルムが効果的。「勿来」ーDon't come here. 名前から来るイメージをシーンにおきかえ、1つ1つの絵をすこしずつ連関させながら展開し、自身の絵巻を作ることに成功している。(村上)























1X14A150 森 菜穂美 A++

美しく清廉とした多摩川とは対照的にここで描かれる多摩川には無名の(顔のない)人物が多く描かれている。極彩色で描かれる世界観は絵画としてではなく生きた川のありようを見せつける。沈みゆく人も含め、川のまわりに確かに人々が存在し、川の一部を成していたのだ。(村上)







1X14A100  中西 渉 A++

「泉橋」。二重橋のかかる川原に死桶を運ぶ人々が描かれた作品。橋や川原は、古来から雑多な人々を受け入れる場所でもあった。そういった川原者を描く視点は秀逸だが、現実の風景との連関を指示する視点が欲しかった。(早田)


















1X14A139 松田 はるか A++

「なかはらかいどう」。中世から徳川期を経て現代まで続く古道の名前である。黝く塗り潰された紙面をけがいて色を差し込んで描いた画像が、「還往原中」の近世の風景をうかわせる。彩色した絵が「往還」の雰囲気を伝えているのが良い。そのことをとおしてこの街道各の由来を読み込んだ作者の想像力をもっと発揮してほしかった。(入江)
























1X13A802 矢尾 彩夏 A++

現代の商業的アイコンが取り込まれてしまった、架空の過去が描かれた街並。シンボルの自由な再解釈や、違う用途に用いられてしまっている電線など、ユーモアあるディテールにニヤリとさせられる。(山本)




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