C7 「他人の作品」

2015 設計演習C 第七課題 



「他人の作品」


 あらゆる情報へのアクセスが格段に容易になった昨今、先人からの学びと他者の模倣との区別は容易ではない。倫理的な問題も含めて簡単に結論は出ないが、少なくとも他者の模倣をすることが創作を行う最終的な目的でないことだけは確かだと言える。 一方で他者の発想・スタイル・作家性をインスピレーションの源とすることはアイディアを考える上での方法論でもある。ブラームスはハイドンやパガニーニのテーマを用いて作曲を行っているし、ピカソが先人の作品を積極的にモチーフとして取り上げているのは既に知られている通りである。他者という自分と対立する外部を持ち込むことで自分一人では到達し得ない化学反応を得る手法は創作を行う上で有効であり、その最終的な目的とも矛盾しない。本課題では、これらの背景を踏まえた上で「他人」との化学反応をテーマに立体造形に取り組んでもらおうと思う。「他人」は歴史上著名なアーティストでもいいし、建築家でも構わない。あるいはあなたの隣で製作をする同級生や、架空の人物を「他人」として設定するのも良いだろう。ただし、単にその人の作品を真似るのではなく、そのスタイルの核心を一度文章化し、その上で違う特性を持つ「自分」との化学反応を模索して欲しい。文章の提出は不要だが、講評の際には必ずまとまった形で発表すること。他者のスタイルと強制的に化学反応を起こさせることで、まだ誰も見たことのない「他人の作品」を作り上げてもらいたい。


提出物: 立体作品 サイズ: 自由材料:その他の規制については採点者の立場に立って各自判断すること


出題: 11/25(水) 提出: 12/2(水) 講評: 12/9(水) 
文責:山本








1X14A013 板垣 翔大 A+++
人体という形の持つ空間性を鉄やコンクリートで型取ったのがアントニー・ゴームリーの作家性であるとすれば、その素材が柔らかくかつ日常的なものに置き換えた点は明らかに今までにない一歩であり、アウフヘーベンと言うにふさわしい、化学変化を成し遂げている。手足を細く縫い縮めただけの衣服は、それを最小限の手数で示しただけでなく、人体のデフォルメとしても興味深い形態を見せてくれる。(山本)









1X14A094 戸田 弘志 A+++
モンドリアンの絵画作品を立体作品として再構築した実験的な作品。絵画では表現しえないvoidや粗密なマテリアル感にsection表現としての力強さが合わさることで、モンドリアンの追求した厳粛な抽象表現とは別次元でのモノとしてストイックな作品が表出している。(村上)










1X14A109 根本 悠希 A++
「他人の作品」として捉えるのは野蛮というもの、上質のパロディとして評価するべき作品だろう。もっとジョークをふんだんに盛り込める着想であっただけに、アイデアの不徹底は残念。(山本)











1X14A164  鷲尾 拓哉 A++
IKB inspired。フランスの夭逝した画家イブ・クラインを「他人の作品」とした作品。クラインは青を主題とした絵画で知られる。現代の「携帯」を青く塗りつぶしながら、時代での先端へ向かって化学反応を起こして、デバイスに未来を切り拓く役割を与えようとしたのだろう。「青」の塗布が丁寧であるところに、見る側に思惟の展開を与えた。
(入江)











1X14A038 輕部 蘭 A++
MASSIMO Scolariの1978"The Secret Town"という絵画作品を題材とし、ランドスケープ模型として表現された作品。絵画の持つ伸びやかな白の台地の世界を立体に写し取りながら、そこに黒く汚された鉄の、高く持ち上げられた小屋を置くことでそのランドスケープと対峙させようとしている。小さいが、美しくまとめられた良作である。(早田)





 


1X14A042 木内 星良 A++
「一方通行の家」と題された。
単一のユニットと螺旋状に積み上げた住宅模型の作品。規格化されたコンテナハウスの不条理な接合として立体化された様にもみえるが、これを建築として、見た時には、危なっかしさが先行してしまうようにも見える。コンポジションの明快さは一瞥では済まされないものがある。(早田)










 1X14A086 田嶋 玲奈 A++
一見何気ないガラクタの集積、一筋の光を浴びて初めてロダンの「考える人」の影が浮き上がる。福田繁男の「ランチはヘルメットをかぶって…」を直接の源にしており、作者ならではの化学反応があったとは言えないが、人体のフォルムは美しく表現されており、力作といえる。(山本)










































1X14A019 梅原 令 A++
モディリアーニの絵画がそのまま胸像として、悲しげにジャンマの網膜に残像として残った風景をまとって立ち上がる。悲劇を暗示するような空虚な視線をコラージュ手法が相乗効果をなして、印象的な作品に仕上がって、いる。(村上)
























1X14A137 増田 渓人 A++
「歩く男:Re」。これ以上細くなり得ない前傾姿勢のブロンズの歩く男像はジャコメッティを評する作品である。作品は芯にタコ糸で巻き上げられた頭でっかちで太目の像であり、細い足は二本の竿が足になったように台座の上を歩いている。タコ糸が台座も縛り付けていることで、像と台座を関係つけて現代の桎梏を「歩く男」像が生まれてきたと言える。(入江)


















1X14A129 古垣 ゆかり A++
「母の肖像」。泉鏡花の言葉が添えられている。作者が「母の肖像」を描くパフォーマンスを行って、そのこと自体を立体作品とした点、また鏡花文学の妖艶な世界の背後にある母性的なものへの憧れを自らの体験の中に重ね合わせることで、パフォーマンスに深みが与えられたと思う。黄色いバラが添えられていることも象徴的な作品に見える。(入江)


















1X14A081 鈴木 優也 A++
「試行と思考−虚無−」と題された作品。Sol Lewittの原色をつかった作品群からインスパイヤーを受け、色や大きさの異なるcubeを積み上げて、人体を象形した作品。色を制約的に用いることで不思議な奥行きを生む、Lewittの作品を継承しながら、最小限の操作で、形態を表出させており、台座のスミに置かれた配置も秀逸である。(早田)















1X14A160 米満 光平 A++

Duchampの作品が隠し持つ性的なシンボリズムを強調しようと試みたのだろう。しかしながら作者の意図に反してあけっぴろけなヌードを見せられたような隠微さの欠如がまず目についてしまい、やや鼻白む結果となっている。(山本)

















1X14A156 山本 圭太 A++
草間彌生にインスパイアされたであろう作品。空間に直接的に入れずみを刻んでいく彼女の手法とは対照的に、そこにあった人の痕跡をマーキングすることで逆に、「人間の身体がドットで埋めつくされた作品」を想起させる仕組みになっている。(村上)







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